撮影日:2021年9月20日
動画:「特急しなのの振り子が故障するとこうなります... 」
19時を過ぎて、長野駅にいます。
本日中に名古屋に帰りたいのですが、こうなると選択肢はただひとつ、特急しなの号に限られてきます。
長野駅を19時40分に出発する、最終の特急しなの26号はこちらでも紹介した通り、最速のしなの号なのです。
今回は、このしなの号に乗車したところ、非常に稀なアクシデントに遭遇したので紹介していきます。
謎のちゃんねる さん「これは、かなり本気の走りを見せてくれるということで、楽しみですね。」
謎のちゃんねるさんも楽しみにしていた最速のしなの号の走りでしたが…この後、とんでもないアクシデントに遭遇することを私たちは全く知る由がありませんでした。
列車は出発時刻の数秒前に扉を閉め、19時40分ちょうどにブレーキを緩解して出発してきます。
383系「キェェェェェー」
謎のちゃんねる氏「キモチェェェェェー」
となりそうなぐらい、非常に気持ちいいブレーキ緩解音と共に名古屋へ向けて走り出します。
最初の停車駅である篠ノ井駅を過ぎると、日本三大車窓でお馴染みの姨捨駅を通過しています。
この姨捨駅は当チャンネルと非常に縁のあるところでもあります。
昼は眺望・夜は夜景が楽しめます。
名古屋駅への到着は22時34分と、約3時間の長旅となるので、長野駅の乗車前には刺身と寿司、ビールを用意して車窓を楽しみながら過ごしていきます。
「信州産のサーモンを堪能して帰るのみ」と思っていた私たちは、思ってもいなかったアクシデントに見舞われるのです。
明科・松本と停車していき、JR東日本とJR東海の境界駅である塩尻駅に到着しました。
この段階で列車は3分程遅延しているというアナウンスがありました。この段階では私は特に気にしていませんでした。130km運転ができる上に、低重心車体・制御式振り子装置の性能をフルに発揮すれば3分の遅れはすぐに解消できるはずなのです。
ですが…今回はそうはいきませんでした。
自動放送「木曽福島の次は、中津川にとまります。」
長野と名古屋のちょうど中間地点にある木曽福島を発車。所定の出発時刻は21時08分なのですが、この地点で時刻は21時17分。
塩尻駅での3分の遅れが回復されたかと思いきや、なぜかむしろ10分程に遅延が増大しています。
本来は制御式振り子装置をフルに作動させて遅延を回復させるはずですが、なぜか逆に遅れてしまっています。
この地点でやっと何かがおかしいということに感づいたのでした。
この「おかしい」が確信に変わったのは中津川駅到着前の放送でした。
車掌(車内放送)「名古屋から先、新幹線のぞみ261号 新大阪行きにお乗り換え予定のお客様。いらっしゃいましたら、車掌が通りました際にお知らせください。」
現在の時刻は21時50分。まだ、しなの26号が名古屋駅に到着するまで1時間弱もあるのに、終点の名古屋駅で乗換ができなくなるという放送が流れたのです。
383系の性能をフル発揮すれば、10分ぐらいの遅れは取り戻せそうな気がしますが…なぜかこの地点で遅れを取り戻すことは諦めかけていたのです。
更におかしいのは、通常遅れが生じた際は原因がアナウンスされるのですが、今回は「遅れている」という事実しかアナウンスされないのです。
この段階で何かおかしいと気付いた私は車内を探訪することにしました。
私が乗車したのは自由席である8号車。一番先頭の車両です。
7号車に渡ったところで、私は原因に気付きました。
分かりにくいかもしれませんが、先頭の8号車が若干左に傾いているのです。
比較として5号車と6号車の間ですが、こちらは傾きが同じようになっているようにみえます。
8号車だけなぜか左に傾いているようです。
これはどういうことかといいますと、383系は制御式振り子装置を備えているものの、装置が壊れてしまっているのです。
通常は曲がるときにだけ、遠心力を打ち消すためにその方向に車体が傾くのですが、なぜか今回は左に曲がっていないときにも、車体が左に傾き続けていたのです。
このような故障の動画はYouTube上では見られないので、幸か不幸か非常にレアな場面に遭遇したことになります。
※今回の同行者である謎のちゃんねる様も同様に今回の振り子故障の動画を投稿しています。
こちらもよろしくお願いします。
謎のちゃんねる「【振り子が故障!】特急しなの号に乗ったらまさかの珍事が発生した」
振り子が故障するとどうなるのか、ここからはその点に注目していきます。
心地よいVVVFインバーターを鳴らしながら、しなの26号は22時19分に多治見駅を出発。定時は22時11分であるので、8分程遅延しています。木曽福島駅での遅れはほとんど回復することなく、名古屋地区の近郊区間に突入していくことになりました。
この段階でこの遅延幅であると、終点の名古屋に定時に到着するのは不可能であると乗客の誰もが察していることでしょう。
制御式振り子装置を活用するのはカーブがある区間だけですが、それ以外の直線区間でも最大性能の130km運転を行わずに120kmに抑えて運転を行っていた区間が愛知県内に入ってから目立つようになりました。
通常なら、これぐらいの遅延幅だと回復運転のために直線区間で130km運転を行うのですが、制御式振り子装置が故障している関係で抑えているのではないかと私は推測しています。(他にも理由はありそうですが、それは後ほど…)
列車は、8号車が若干左に傾いた状態が続いたまま、名古屋市内最初の駅である新守山駅を通過していきます。いつもとは違い、しなの号が通過するホームの反対側には普通列車がいません。
通常は新守山駅で先行する普通列車を追い抜くのですが、今回は10分弱の遅れということで普通列車は先に発車してしまったようです。
名古屋の夜景を見ながら、最後の途中停車駅である千種駅に到着です。
印象的な点としては、今回のしなの号はかなり早い段階から速度を落としていました。
千種駅の手前には大きな右へのカーブがあるので、制御式振り子装置が正常に作動している車両は右に傾いているのですが、故障している8号車だけは左に傾いています。8号車にかかる遠心力が強くなるため、速度を通常よりも落として侵入するのです。
千種駅停車中に傾きを外から確認しようと思ったのですが、停車中はどうやら特に傾かないようです。恐らくですが、停車中は制御式振り子装置を完全に止めていることでしょう。
新たな発見とともに、列車は千種駅を発車していきます。
千種駅を出発すると、再び8号車だけは振り子装置の故障で左に傾いていきます。
この先、金山駅の手前付近まで直線区間が続くのですが、いつもよりもゆったりとした速度で走行しています。
そうです、先程新守山駅で通過待ちを行わずに発車した普通列車がこの列車の前にいるのです。
普通列車が前にいることで、このしなの号は思うように速度を出せません。このまま遅れは回復するどころか増加してしまいます。
ここまでの道中で130キロ運転を実施してこなかった理由は、もしかしたら先行する普通列車を追い抜かずに後追いで走行することが予め決まっていたからなのかもしれません。無理に回復運転を行っても遅れを取り戻せないなら、あえて無理のない運転をしていたと思われます。
運転台のモニター画面を見てみると、「自然振り子スイッチが入っています。」という表示が点滅しています。
383系は自然振り子装置ではなく制御式振り子装置を搭載しています。しかしながら、このような表示が出てくるということは何か深い意味があるのかもしれません。
気付けば列車は名古屋駅到着目前となっていました。
木曽福島駅辺りから新幹線の乗継に関する案内がありましたが、どうやらのぞみ261号は既に名古屋駅を出てしまっていたようです。新大阪駅方面へはまだ後続の新幹線があることから、どうにかなるとの判断で問題が無かったのかもしれません。
しかし、22時45分発の新快速 米原行きはまだ名古屋駅で待機しているようです。この新快速は大垣駅から先の終電となっている関係で、この区間を利用される乗客の足を確保するためにしなの26号の到着を待ってから発車するようです。
最終的に列車は9分遅れの22時43分に名古屋駅に到着しました。
今回のしなの号は振り子の故障で車体が左に傾くという状態の列車に乗り合わせたということでした。
右に傾く際に乗り心地が悪くなってしまうことから、右カーブの際はかなり速度を落として運転していたという印象を受けました。そのため、右カーブを通過するたびに遅延が増大して、他の列車との兼ね合いで思うように回復運転が出来ずに終点に到着するまでに遅延が増大してしまいました。
ちょうど故障した車両に乗り合わせていたのですが、いつも感じる振り子が動作している感覚が今回は全く感じられませんでした。
しかしながら、運転士の技術によってカーブで不快となりませんでした。
今回は非常に稀なアクシデントに遭遇しましたが、乗り心地向上のために運転に気を遣っていた運転士さんには感謝の気持ちしかありません。
白衣鉄道 / Lc_Railway Official Site
Copyright © 2021 白衣鉄道 / Lc_Railway and ぽたんけ合同庁舎 All Rights Reserved.